総務常任委員会管外調査・大分県九重町
八丁原(はっちょうばる)発電所のある九重町は、大分県中央部にあり、東と南を阿蘇くじゅう国立公園の九重連山、西側を耶馬日田英彦山国定公園の山々に囲まれた、高原と温泉の町です。
平成4年に「地熱ミュージアムタウン構想」を策定するなど、地熱発電所とその周辺地域の産業活性化を目指して、地熱発電所を単なる発電だけの利用にとどめるのではなく、農業、観光、レジャー・リゾートなどの産業分野を超えて、多目的に活用し、民間企業の協力も得て地域の活性化を図っています。また、九重町は他の町と合併をしない『自律のまち』を目指しています。
八丁原(地熱)発電所『地熱のまち』を目指した地域活性化の取り組みについて
調査当日は、日本列島が寒気に覆われた日で、九州と言ってもこのあたりは標高も高く、まさか今年の初雪を九州で迎える事になるとは、思いもしませんでした。
八丁原発電所は、九州電力の地熱発電所で、地熱発電所としては日本最大(総出力11万kW=約4万世帯分)です。地熱発電とは、ごく簡単に言ってしまえば、温泉地域の高圧地下蒸気を使って、タービンを回し発電するというものです。
日本の地熱発電総容量は、およそ561MWで、これは世界で5位にあたります。火山も多く、地熱発電の技術水準も高い我が国で、地熱発電がそれほど盛んではないのは、その候補地の多くが国立、国定公園に指定されていたり、温泉観光地域であったりするため、景観を損なう発電所の建設に理解が得られない場合が多いためです。
本県内でも、新温泉町において、温泉熱を活かした「※地熱バイナリー発電」の事業化調査に着手した事があります。
地熱発電は、石油などの化石燃料を使わないクリーンエネルギーであり、貴重なエネルギーを国産で採掘できる事から、現在見直しが進められております。
更に、将来の構想として、マグマだまりの近傍の高熱を利用したマグマ発電の検討が行われています。開発には少なくとも50年はかかると言われておりますが、潜在資源量は60億kWに及ぶと見積もられ、これを用いると日本の全電力需要の3倍近くを賄えるだろうと言われております。
※地熱バイナリー発電:地下の温度や圧力が低く、熱水しか得られない場合でも、アンモニアやペンタン・フロンなど水よりも低沸点の媒体を、熱水で沸騰させ、タービンを回して発電させる方法。温泉のみならず、工場排水等でも可能。
他の町とは合併せず「自律のまち」を目指して、「九重“夢”大吊橋」をいかした地域活性化の取組
「九重“夢”大吊橋」は、平成18年に日本一高く長い歩行者専用吊橋として、総工費約20億円をかけて開通しました。湯布院と黒川温泉と言う全国的に有名な温泉宿泊地に挟まれた立地を活かして、その通過観光客(550万人)を見事にとらえ、驚くべき成果をあげている事業展開です。
深い渓谷に架けられた、人しか渡れない吊橋、渡っても向こうに何があるわけでなく、また戻ってくるだけの橋。しかし、高さ長さは日本一。恐怖感も日本一。更に絶景。渡り賃は、中学生以上が500円、小学生以下200円。この10月で開通満2年。入場者数3,873,674人。入場収入976,513,000円。物産直売所売上額(平成19年度)990,000,000円也。
合併しない九重町:人口11,108人。高齢化率34.1%。財政歳入7,659,633千円、歳出7,273,655千円、経常収支比率87.6%(同篠山市97.7%)、なんと実質公債費率2.2%(同篠山市19.5%)。資源に対して目の付けどころや、投資判断等々、経営感覚に優れているとしか言いようがありません。橋にかけた投資分は、もうすぐ回収できそうです。一言で言ってしまうと、「目の付けどころ」が凄い。
この他に、大分県庁にて森林環境税に係る取組についての調査や、iichiko総合文化センターにて、ネーミングライツの取組等についても調査してきました。